2024年9月6日(金) 笠間市稲田 石切山脈 | ||
『歴史的名建築を支える白い貴婦人 「石切山脈」』という新聞の特集記事に誘われて、JR水戸線の稲田駅から徒歩20分弱のところにある石切山脈を訪ねる。 宇都宮宿の大谷石資料館に続き、石に関係する施設であるが、石切山脈は露天掘りの採石所であるため、ぶり返した残暑の強い陽射しに見舞われ、大汗の見学となる。稲田駅は無人の小さな駅であるが、駅前には稲田石製と思われる大きな石燈籠が建ち、足元の石畳も白く光っているところから稲田石が敷かれているようである。 事前申込みした11時からのプレミアムツアーまでの時間を利用して、施設内に展示されている彫刻を見物する。稲田石は6000万年前に生成された花崗岩で、美しい光沢と耐久性に勝れていることから建物の外装、敷石等に使用されることが多いようであるが、彫刻にも利用されているようである。また、稲田石は御影石とも呼ばれ、身近なところでは墓石に用いられている。 |
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JR水戸線稲田駅 駅に向かって左に稲田石製の燈籠、右に「石の百年館」、駅前の白く見える敷石は稲田石 |
石切山脈 前山の展示場1 稲田石の彫刻 空に向かって羽ばたくハト |
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石切山脈 前山の展示場2 稲田石の彫刻群 |
石切山脈 前山の展示場1 稲田石の平和の使者ハトの群れ |
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宇都宮宿の大谷石に比べて採掘が始まったのは新しく、明治32年(1899年)からのことでまだ現役の採石場である。すでに掘りつくした前山の前には、雨水が流れ込んで出来た水溜まり、関係者は丁場湖と呼んでいる池がある。水深40数メートルあるというから、前山はそこまで掘り進んだことになる。目にすることができる、屏風のようにそそりたつ前山は40数メートルあるので、湖がなければ80メートルを越える絶壁が眼前に現れることになる。 前山はほぼ直角に近い傾斜で下に向かって階段状に掘り下げているが、階段のステップには木が根を張って茂り、前山の斜面を覆い始めている。自然の力、自然の調和といった摂理を感じる。前山の表面に茶褐色に変色している部分が見られるが、これは稲田石に含まれる鉄分が酸化したためである。 |
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前山と丁場湖 青い空が湖面に写り込み美しい |
前山と丁場湖 |
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プレミアムツアーのガイドさん |
前山 東日本大震災で崩落した大岩 辛うじて3点で支えられて丁場湖への落下を防いでいる |
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プレミアムツアー参加者4名を乗せた車は前山の奥に開かれた新しい採石場である奥山に向かう。現在、この採石場で働ている職人は15名ということで、明治時代に数百名を数えたことから比べると機械化、技術革新が進んだことがわかる。奥山の地下数百メートルまで鉱脈が確認されているとのことで、これからも年々その姿を変えていくことになる。 約1時間のプレミアムツアーが終わり、汗だくとなって前山の展示場に戻ると、カフェで名物の特製モンブランケーキを販売している。大好物のモンブランケーキを見逃す手はなく、早速注文する。笠間名物の栗をふんだんに使ったモンブランケーキは濃厚な栗の味を味わえ、大満足である。 ケーキを食べながら、ふと「石切山脈」と名づけた山脈とは何なのであろうとの疑問が浮かんできた。山脈とは山の連なりのことである。前山や奥山の掘削された屏風のような階段状の姿を表現したものか、あるいは稲田石を生み出す小さな山がいくつか連なっていた光景を言うのかなどの推測が頭に浮かぶが、たぶん前者ではないかと思う。やはり現実に目にすることができる採石場の姿を表現する言葉として山脈と命名したのであろう。 |
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奥山は現在も採石が行われている 奥山の上部は手掘り、中ほどは機械掘り、下部はワイアソーによる採石と時代とともに掘削方法が変遷してきている |
奥山プレミアムツアー参加者とガイドさん |
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奥山の水溜まり トンボが飛び交い、蛍も舞い踊るというが、数十年、百年後には前山の丁場湖のようになるのであろう |
特製モンブランケーキ |
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